7歳のトイプードル「マロン」をお迎えしました。BCS1というかなりの痩せ型から、体重増加のために去勢手術を終え、ようやく順調に回復してきた矢先のこと。ソファからの飛び降りで右前足を骨折してしまいました。
今回はギプス固定から7週間が経過したマロンの現状をお届けします。
シニア犬や痩せ型のワンちゃんの骨折治療で悩んでいる飼い主さんの参考になれば幸いです。
7週間後のレントゲン検査:仮骨は見えず、皮膚トラブル発生!
前回の診察からさらに4週間(ギプス固定から通算7週間)が経ち、再度レントゲン検査を受けました。
結果は、今回も「仮骨形成(新しい骨ができる兆候)」の気配すら確認できず、骨はくっついていない状態(癒合不全)のままでした。骨のズレがないことだけが唯一の救いです。
もともと全治2〜3か月くらいと言われていたので、骨がくっついていないのは想定内です。
しかし、今回レントゲン撮影のためにギプスを一度外したところ、手首の骨が出っ張っている部分の皮膚が、赤く化膿していたのです。

「ギプスの中で皮膚が化膿してしまった」と一言で言えばそれまでですが、人間の看護に携わる私の目には、「褥瘡(じょくそう:床ずれ)」にしか見えませんでした。
マロンの状態を振り返ると、まさに褥瘡が発生するリスクの塊(ハイリスク因子)でした。
1. 高齢(8歳・シニア期): 皮膚自体のバリア機能や再生能力が低下している。
2. 極度の痩せ・低栄養(BCS1): 骨の周りにクッションとなる脂肪や筋肉が一切ない。
3. ギプス固定による湿潤(蒸れ): 密閉された環境で皮膚が弱くなっていた。
4. 過活動による摩擦: 痛みが引いてからギプス姿でぴょんぴょんと走り回っていたため、内部で激しい摩擦が起きていた。
骨折部位をカバーするために広範囲に巻かれていたギプスが、マロンの細く骨ばった手首を圧迫し続け、ついに悲鳴を上げてしまったのです。
骨折が治っていないのに、皮膚まで破綻してしまった現状。化膿している部位をさらにギプスで密閉し続けるわけにはいきません。ここでギプスでの治療は終了となりました。
手術か経過観察か
現状を受け、担当の獣医師からは今後の治療として2つの方法を提案されました。
提案① 手術(海綿骨移植術)
マロン自身の肩の骨から「海綿骨(かいめんこつ:骨の再生を促す細胞が豊富な組織)」を採取し、折れている中手骨に移植してワイヤーで固定する手術です。ワイヤーによる機械的な刺激が骨の再生を促すメリットもありますが、これまでの回復スピード(代謝の低さ)を見る限り、「手術をしても絶対に骨が生えてくるとは限らない」というシビアな現実も告げられました。
提案② 経過観察(ギプスを外し、このまま様子を見る)
犬が歩くときにメインで使っているのは真ん中の「第3・第4中手骨」という骨です。幸いにも、今回マロンが折ってしまったのは、左右への方向転換などを補助する役割の「第2中手骨」でした。
そのため、骨折の急性期の痛みがなくなれば、骨がくっついていなくても歩けました。
ただし、経過観察を選ぶリスクとして、万が一骨折部位が細菌感染などを起こして激しく腫れ上がってしまった場合などは、最悪のケースとして「足の切断」という選択肢も出てくると説明されました。しかし、幸いにも「今は緊急を要する状況ではない」とのことでした。
経過観察を選びました
骨折を治して元通りにしてあげたいと考える方もいらっしゃるとは思います。
でも、痩せでシニアの仲間入りをしたマロンにとっては手術はかなりの負担になると考えられます。
骨折を治すという目的のために、1.26kgの小さな体に再び麻酔のリスクを負わせること、そして骨を採るために「骨折とは関係のない肩」にメスを入れ、新たな痛みを痛がらせることは、今のマロンにとって負担が大きすぎます。しかも、それだけのリスクを負っても治る保証はないのです。
現状歩けないなら、歩くための手術は選択肢にあったかもしれませんが、マロンは毎日歩いて好きな場所に行き、ご飯を食べ、お水を飲み、眠ることができています。その「今の当たり前の日常」があるのなら、骨がくっついていなくても、このまま穏やかに過ごしてもらうのが一番の最善策だと判断しました。
ギプス固定の代償:体重減少
ギプスを外したマロンの右足はもともと少ししかついていなかった筋肉が完全に落ち、まるで小枝のように細くなっていました。
長期間の固定によって筋肉を使わなかったため、関節が固まる「拘縮(こうしゅく)」が始まっています。これも医療従事者としては想定内の経過ではありますが、実際に目の当たりにすると、動かせないとこんなに筋肉が痩せてしまうんだなと痛感しました。
さらに、体重も減ってしまっていました。
ギプス固定中は正確な測定ができないため「ギプス込みの総重量」で推移を見ていましたが、前回1.36kgあった総重量が、今回は1.31kgにまで減少していたのです。

家に帰って測ってみると、わずか1.28kg…去勢前とほとんど変わりません。
実はここ最近、マロンの食べる量が一時的にガクンと落ちてしまっていました。もしかしたら化膿している部分が痛くて元気がなかったのかもしれません。
今できること:褥瘡の治療と、食欲増進
まずは目の前にあるトラブルを一つずつ解決していくしかありません。マロンの日常を守るため、自宅でのケアをスタートしました。
褥瘡の治療
- ギプス治療の終了: 圧迫と摩擦の原因をなくすため、ギプスは完全に除去しました。
- 褥瘡(化膿)の局所ケア: 病院から処方された中性電解水で患部を優しく清拭し、抗生物質軟膏(ゲンタシン)を塗布。
……しかし、ここでも新たな問題が。
気になって足をペロペロと舐めてしまい、せっかく塗ったゲンタシンがすべてマロンのお腹の中へ。
舐めさせないように100均で売っている、指用のネット包帯を切って使うことにしました。

食欲増進剤:ミルタザピン
そして最優先事項である「食欲不振」へのアプローチとして、動物病院から食欲増進剤である「ミルタザピン」を4回分、頓服(とんぷく)として処方してもらいました。
とりあえず食べて、栄養をつけるしかない。
骨がくっついていようがいまいが、褥瘡を治すためにも、落ちてしまった筋肉と体力を取り戻すためにも、今のマロンに必要なのは「とにかく食べて栄養をつけること」その一言に尽きます。
まずは今日のご飯を一口でも多く食べてもらえるよう、マロンの「食べる仕組み」と再び向き合っていきます。





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