この記事は「小型犬が痩せる・食べない原因と対処法まとめ」で紹介した「ホルモンの影響」「体調不良(口腔内トラブル)」への対処を、実際の決断の経緯とあわせて詳しくまとめたものです。
7歳のトイプードル「マロン」をお迎えしました。食べムラが激しく、BCS1という痩せ型の犬です。
食事の工夫を続けて2か月。体重維持はできたものの、目標の「増加」には届きませんでした。そこで次のアプローチとして検討したのが、去勢手術です。そして実はこのとき、私たちはもう一つ大きな決断もしていました。残っている歯のほとんどを抜く**「ほぼ全抜歯」**です。
7歳という年齢、そして1.26kgという超軽量の体に、2つの処置を同時に行う。不安がないわけではありませんでしたが、マロンの「これから」を考え、手術に踏み切ることにしました。
この記事でわかること
- なぜ「去勢」と「抜歯」を、あえて同時に行う決断をしたのか
- 1.26kgという体重で全身麻酔に挑む上での考え方
- 術後の負担を減らすために事前に準備したこと
1. 去勢によって期待できる3つのメリット
去勢を単なる「繁殖防止」ではなく、マロンのQOL(生活の質)を上げるための「治療的介入」として捉えました。
- エネルギー代謝の変化:去勢後はホルモンバランスの変化により基礎代謝が下がります。食べる量が変わらなくても体重が増えやすくなるため、痩せ型のマロンには大きなメリットになると考えました
- 発情ストレスの緩和:未去勢のオスが感じる特有のストレスを軽減することで、食欲の安定や精神的な落ち着きを狙いました
- 将来の疾患リスク低減:精巣腫瘍や前立腺肥大など、シニア期に増えるオス特有の病気を未然に防ぎます
体重管理の工夫だけでは増量が難しかった経緯は、体重管理編の記事で詳しく記録しています。
2. 口腔内の異変:「普通」だと思っていた口臭の正体
去勢と同時に決めたもう一つの処置が「抜歯」でした。きっかけは、マロンの強い口臭です。
実を言うと、私はマロンを迎えた当初、彼の強い口臭を「犬ならこれくらい臭うのが普通なのかな」と思っていました。犬と暮らすのが初めてだった私にとって、それが比較対象のない基準だったのです。
しかし、ある日ペットショップで子犬を抱っこさせてもらった時、衝撃を受けました。「……子犬の口って、全然臭くない!」マロンの口臭は、決して「犬のニオイ」ではなく、「病的な腐敗臭」だったのだと気づかされた瞬間でした。
改めてマロンの口内を観察しようとしましたが、彼は口元を触られるのを極端に嫌がりました。痛みや違和感があるのは明らかです。獣医師にしっかり診てもらうと、以下の状態でした。
- 重度の歯石:歯の形が見えないほど厚い歯石が付着
- 動揺度(ぐらつき):獣医師に触診してもらうと、4本とも動揺
- 脱落:部屋に落ちていた歯は、虫歯と歯石でボロボロの状態
マロンに残っていたのは、噛み切るための「犬歯」4本ほど。触るのを嫌がるので正確にはわかりませんでしたが、ドッグフードを食べるのに必要な奥歯は、すでに機能していないか、痛みの原因でしかありませんでした。

3. なぜ「同時に」行う決断をしたのか(麻酔回数という視点)
1.26kgの体に、去勢と抜歯を同時に行う。看護師として、術後の身体的侵襲(ダメージ)を心配し、獣医師に相談しました。
私の懸念は「2つの処置を一度に行う負担」でしたが、獣医師の視点はこうでした。
「歯周病菌が常に血管に入り込み、心臓や腎臓に悪影響を及ぼすリスクの方が圧倒的に高い」
また、超小型犬にとって最も避けたいのは「全身麻酔の回数を増やすこと」。去勢と同時に抜歯を済ませることで、麻酔の回数を1回に抑えるという方針で、私と獣医師の意見は一致しました。
最終的な決め手は、「歯がなくても犬は困らないが、痛みがあると食べられない」という事実を知ったことです。犬の歯は主に「獲物を仕留め、引きちぎる」ためのもの。丸飲みできるドッグフードを食べる上では、グラグラの痛む歯があるよりも、いっそ無いほうが快適に食事ができるはずです。「しっかり食べられる体を作る」という目標に向け、痛みの原因を物理的に除去する決断をしました。
4. 1.26kgの体で全身麻酔に挑むということ
実は、マロンには以前「体重が軽すぎるため、歯石除去の全身麻酔はできない」と他院で断られた経緯がありました。
今回の受診でも、やはり最大の懸念は「この体重で麻酔に耐えられるか」という点です。しかし、主治医と相談を重ね、以下の結論に至りました。
「体重が増えるのを待っていては、手術のタイミングを逃してしまう。むしろ、手術をして体重が増えやすい体質を作る方が、マロンの将来にとってメリットが大きい」
「安全のために体重を増やしたい」という思いと、「増えないからこそ手術が必要」というジレンマ。最終的には、「今の体力があるうちに環境を整える」という攻めの判断をしました。
5. 術後のストレスを最小限に。事前の「環境設定」
手術そのものと同じくらい大切なのが、術後の看護(アフターケア)です。マロンの負担を減らすため、2つの準備を行いました。
エリザベスウェアの導入

マロンは過去の骨折治療でエリザベスカラーを経験していましたが、装着すると非常に動きにくそうでした。特に狭いケージ内では、カラーが当たって水が飲めない、方向転換ができないといったリスクがあります。そこで、術後服(エリザベスウェア)を用意しました。サイズ選びが難しい超小型犬ですが、専用サイトのサイズ判定サービス(外部リンク)を利用し、マロンにぴったりの一枚を見つけることができました。
看護師のシフトを活かしたスケジュール管理
術前・術後の変化を見逃さないよう、仕事のシフトを調整しました。
- 術前検査:1週間以内に血液検査・レントゲンを実施
- 当日:日帰り手術。夜勤明けを活用してお迎え体制を確保
- 術後1日目:異変がないか終日モニタリングできるよう休日を配置
6. 【番外編】「え、入れ歯にするの?」
この抜歯の話を職場の同僚(看護師)にすると、高確率でこう聞かれました。「えっ、抜いちゃって大丈夫?入れ歯にするの?」
実は私も、一瞬だけ獣医師に聞きそうになりました(笑)。しかし、犬の義歯なんて聞いたことがありません。犬は抜歯後、歯茎が硬くなってそのままの状態で元気に生きていくのです。「人間とは違う」という当たり前のことに、改めて気づかされた出来事でした。
7. まとめ:「体を作る」ためのリスタート
- 去勢は「繁殖防止」ではなく、代謝・ストレス・将来の疾患リスクへの治療的介入として決断した
- 抜歯は、歯周病菌による全身への悪影響と、麻酔回数を1回に抑えるため、去勢と同時に行うことにした
- 1.26kgという体重は不安材料だったが、「体重が増えるのを待つ」より「今の体力で環境を整える」ことを優先した
- 術後の負担を減らすため、エリザベスウェアの準備やスケジュール管理など、事前の環境設定を丁寧に行った
正直、手術当日までは「もしものことがあったら……」と不安でいっぱいでした。しかし、食事の工夫だけでは突破できなかった壁を超えるためには、この決断が必要でした。
この選択が、マロンの体にどのような変化をもたらしたのか。手術当日の様子と術後の経過は、こちらの記事で詳しくレポートしています。
▶ 【術後経過編】1.26kgの挑戦|去勢・全抜歯からの4日間を完全レポ
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