【緊急事態】元気すぎて骨折?0.7mmの細い骨と、レントゲンに写った3年前の「創外固定ピン」が招いたリスク

投薬記録

この記事は「小型犬が痩せる・食べない原因と対処法まとめ」で触れた「体調不良(骨折などの痛み)」の実例です。去勢・全抜歯の術後1か月で欲求が目覚めて元気になったばかりの時に起きた、骨折発覚から過去の真相解明までを記録します。

7歳のトイプードル「マロン」をお迎えしました。食べムラが激しく、BCS1という痩せ型の犬です。体重を増やすために試行錯誤し、去勢手術も終え、回復も良好で元気いっぱい走り回っていました。

そんな矢先に、事件は起きました。「なんでもない普通の日」が、一瞬にして緊急事態に変わった記録です。

この記事でわかること

  • 元気に動き回っていた愛犬が、突然骨折に至った経緯と気づいたサイン
  • レントゲンに写った「謎の金属片」から判明した、3年前の骨折治療の真相
  • 動物病院にも存在する「カルテ開示」という選択肢

1. 絶好調から一転。ソファの昇り降りで起きたアクシデント

その日、私が仕事から帰宅すると、マロンはいつも通りケージの中で「早く出して!」と言わんばかりにぴょんぴょん跳ねて迎えてくれました。ケージから出すと、私を追いかけて部屋中をダッシュ。ソファに飛び乗り、飛び降り、また走る……。我が家では当たり前の、微笑ましい光景でした。

帰宅してから、わずか7分後のことでした。夢中でご飯を食べ始めたマロンの様子に、強烈な違和感を覚えました。右手(右前肢)をだらんと挙げたまま、左手だけでバランスを取って食べているのです。それでも食べるのをやめない食欲に驚きつつ、いくつか動作を確認しました。

  • お座り:右手が地面につけられない
  • 歩行:完全に3本足での歩行(ケンケン状態)

優しく触診してみましたが、明らかな変形はなく、触っても痛がる様子はありません。しかし、頑なに右足を地面につけようとしない様子に、私の脳裏には「折れている」という確信に近い予感がよぎりました。すぐに動物病院へ連絡し、時間外でしたが診察していただけることになりました。


2. 衝撃の診断:第5中手骨の骨折と「謎の遺留物」の発見

小型犬、特にトイプードルの骨折といえば、手首に近い「橈骨(とうこつ)」が有名です。しかし、レントゲンが映し出したのは予想外の結果でした。

折れていたのは、手の甲にあたる「第5中手骨(ちゅうしゅこつ)」。驚くべきはその細さです。マロンの骨はわずか0.7mmしかありませんでした。積極的に手術でプレート固定ができるような太さではなく、今回はギプスによる「保存療法(自然整復)」を選択することになりました。

しかし、診断はそれだけでは終わりませんでした。レントゲン写真の「第2中手骨」付近に、白く謎の金属片が写り込んでいたのです。獣医師も「こんな小さな場所を金属で治療した例は見たことがない」と首をかしげる正体不明の遺留物。骨折のショックに加え、マロンの過去に何があったのか、新たな謎が浮上した瞬間でした。

3. あえて「痛み」を残す選択。ギプス固定中の安静コントロール

帰宅後、痛みがあるだろうと処方された鎮痛剤を1回分飲ませました。すると、痛みが引いたマロンは、あろうことかギプス姿でまたぴょんぴょん跳ね、走り回ろうとしたのです。

これを見て、私は看護師として、そして飼い主として一つの決断をしました。「多少痛いほうが大人しく過ごせるのでは?」骨が細すぎるマロンにとって、今一番怖いのは「再骨折」や「骨のズレ」です。鎮痛剤で完全に痛みを取ってしまうと、自分の状態を過信して動きすぎてしまいます。

「少し痛いから、動くのをやめておこう」と本人に思わせる程度の痛みは、安静を保つために必要不可欠な要素だと判断し、あえて鎮痛剤の継続を中止しました。もちろん、食欲が落ちない程度の「痛みのコントロール」が大前提です。

4. 二度目を防ぐための「自宅環境の再整備」

小型犬にとって、ソファやベッドからの飛び降りは、私たちが想像する以上に骨折のリスクが高い行為です。マロンのように骨密度が低い子にとっては、まさに「命取り」になりかねません。

当日のうちに、家の中のレイアウトを大幅に変更しました。

  • 脚の高めのベッド:破棄
  • ソファ:ソファベッドだったので、フラットにして高さを最小限に

マロンが「飛ばなくて済む」環境を徹底的に整えました。

コアラソファーベッドはベッドにするとマロンもちょうど登りやすい高さになりました。

5. 過去を辿る:動物病院の「カルテ開示」という選択肢

マロンを引き取る際、以前の飼い主さんからは「過去に骨折したことがある」とだけ聞いていました。抱っこから飛び降りた際に折ってしまったとのこと。しかし、その記憶は非常に曖昧でした。「右足だったか、左足だったか……」「いつ頃のことだったか……」具体的な情報は何も残っていませんでした。

唯一の大きな手がかりは、当時治療したという動物病院の診察券が手元に残っていたこと。今お世話になっている獣医師に相談したところ、「以前の病院に問い合わせて、カルテ開示や経過記録の共有を依頼してみては?」とアドバイスをいただきました。人間でいうところの「セカンドオピニオン」や「転院」の際に必要なプロセスです。

医療従事者として日々カルテや紹介状(診療情報提供書)を扱っている身としては、こうした情報の引き継ぎは当然のステップだと思っていました。まずは診察券の番号へ電話。カルテ番号を伝えると、すぐに「マロンちゃんですね」と確認が取れました。正直、この時点ではまだ名義変更の手続きも済んでいなかったのですが、本人(本犬)確認や譲渡の証明などを求められることもなくスムーズに進みました。「このあたり、動物界の個人情報管理は意外と緩やかなんだな……」と、人間の医療現場とのギャップに少し驚いたのはここだけの話です。

電話口で「右前足を骨折してしまったため、前回の治療内容やレントゲンの所見を詳しく知りたい」と依頼。幸いなことに、当時マロンの手術を執刀した獣医師の先生がまだ在職中でした。先生が直接記録をまとめてくださることになり、1週間ほどで文書(診療報告書)を作成してもらえることになったのです。

6. 判明した真相:創外固定ピンの「折れ込み」

過去の記録から、マロンは3年前(4歳のとき)に右橈骨遠位端(みぎとうこつえんいたん)骨折、つまり「右前足の手首に近い部分」を折っていたことが判明しました。ここはトイプードルの骨折における好発部位です。

当時、マロンの右足の骨はあまりに細く、一般的なプレート固定は困難でした。そのため、骨の外側からピンを刺して固定する「創外固定法」という術式が選択されたそうです。しかし、記録には衝撃の経過が残されていました。

  • 固定から1週間後:第2指(人差し指に相当する部分)に刺入していたピンが折れていることが判明
  • 判断:骨折線のズレがなかったため、あえて抜去せずそのまま経過観察
  • 固定から2ヶ月後:創外固定具を除去。折れたピンの一部は、骨の中に遺残した状態で治療終了

当時は、抜去による再骨折のリスクを避けるための「最善の選択」だったと考えられます。これが、今回のレントゲンに写り込んでいた「謎の金属片」の正体でした。

7. 骨の「吸収」が始まっている。マロンの現状

当時は問題なかった「遺残ピン」ですが、3年が経過した今、状況は変化していました。今回の骨折(右第5中手骨)で撮影したレントゲンを確認すると、遺されたピンの周囲で「骨吸収(こつきゅうしゅう)」が始まっていることがわかったのです。

骨吸収とは、骨の組織が壊されて減少していく状態のこと。ピンという異物が長期間留まっていることで、その周囲の骨密度が低下し、スカスカになり始めています。つまり、現在のマロンの右手は以下のようなリスクを抱えています。

  • ピンが骨を貫通するように残っているため、今から抜こうとすると骨ごと折れる危険がある
  • ピン周囲の骨がもろくなっているため、次に強い衝撃がかかれば、この「ピンが入っている部位」から折れてしまう可能性が非常に高い

まさに、いつ爆発してもおかしくない「爆弾」を抱えているような状態なのです。

8. 今、できること。自然経過という名の監視

マロンはとても細い体ですが、元気に飛び回りたいという欲求が強い子です。その自由を奪うことはしたくないですし、止めることも難しいでしょう。ならば、私たち飼い主ができるのは、これ以上骨をもろくさせないための「攻めの守り」です。

  • 栄養摂取の安定:ドッグフードは、それだけで必要な栄養がバランスよく摂れるよう設計されています。まずは、ムラなくしっかり食べてもらい、骨の再構築に必要な栄養を届けること
  • 日光浴によるサポート:気休めかもしれませんが、窓辺で日光浴をさせてビタミンDの生成を促し、少しでも骨の強化につながるよう願っています

3年前の事故で遺された小さなピン。それは、マロンが懸命に生きてきた証でもあります。私たちはそのリスクを正しく理解し、監視を続けながら、マロンがマロンらしく過ごせる日々を支えていこうと思います。

今回の骨折そのものの経過(ギプス固定から3週間・7週間の記録)は、こちらの記事に続きます。

【骨折経過編】ギプス固定から3週間|痩せ型シニア犬の回復スピード

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